もさおのためになる話

もさおが、ためになる話をします。

【ためになる解説】「脳には妙なクセがある」

今回は「脳には妙なクセがある」という本を紹介します。

人間の脳の独特な特徴を、わかり易く解説した本です。

脳の特性を知ることで、勉強や仕事、日常生活に活用することができます。

 

私にも、ムカつく人の顔を見ると殴りたくなるという特性があるのですが、これも人間の脳の特性によって生じることなので、仕方がないことなのです。

 

 

1.後天的に育つ脳

動物は、脳が大きいほど知能が高い傾向があります。

体重が重いほど、脳も大きくなります。動物の脳重量は体重の0.75乗に比例します。

しかし、人間だけはこのスケーリング法よりも脳が重いのです。

 

人間同士で比較しても、大脳皮質が大きい方がIQが高い傾向があります。

大脳皮質の大きさは、生まれた時点で決まるわけではありません。

生まれ持ったものよりも幼少期の行動による影響が大きいのです。

むしろ、幼少期に大脳皮質が薄い人ほど、成長すると大きくなる傾向があります。

 

先進国の女性ほど、身体的劣等感を感じやすいものです。

これは、生まれ持った認識ではなくメディア等により後天的に植え付けられた価値観が影響しているのです。

劣等感や嫉妬を感じると、不安を感じた時と同じ脳反応が起こります。

劣等感を感じやすい人ほど、他人が不幸になることによって感じる快感が大きくなります。

 

「他人の不幸は蜜の味」というのは、自らが劣等感を抱えている証でもあるのです。

一方で、ほとんどの人は自分が平均以上であると自己評価しています。

そして、自己の能力を高く評価する人は、実際に集団の中で優位な立場に立ちやすいのです。

 

2.思考のクセ

【選択肢の罠】

2つの商品のどちらを買うか迷ったとき、最終的に選択した商品の価値を、実際よりも高く認識しやすくなります。

その商品を選んだことを肯定する理由を、無意識に探そうとするのです。

このような現象は、サルにも存在します。

 

また、同じ作業でも、報酬をもらわない方が、報酬をもらった場合より、その作業が面白かったと感じやすいです。

これも、自分がとった行動を肯定するために、無意識に理由付けをしているのです。

報酬を貰えれば、報酬のために頑張ったのだと理由づけできるが、報酬がない場合は、その作業自体に価値を見いださないと、整合性が取れなくなってしまうのです。

 

 

【社会通念による思い込み】

人差し指が短い人は男性ホルモンのテストステロンが多く、収入が高くなる傾向があります。

テストステロンが多い人は数学に強く、瞬発力が高いという特徴があります。

また、証券マンを対象とした実験ででは、テストステロンが朝から高い状態だと、株取引に成功しやすいことが.わかっています。

 

お金を自分の好きな割合で相手と分配し、相手は拒否する権利だけを持っているという実験があります。

受取を拒否されると、ふたりともお金をもらえなくなります。

たとえ1円でも受け取ったほうが得なのですが、提示額があまりに低いと、相手が怒って拒否するリスクが有るのです。

 

この実験では、平均35%程の提示額となりました。

 

お金を提示する側の被験者にテストステロンを投与した場合、提示額が40%程に上昇しました。

意外なことにテストステロンには、寛容さを生じさせる効果があったのです。

 

一方、テストステロンを投与すると伝え、実際には投与しなかった場合、提示額は30%程に低下しました。

テストステロンには攻撃性を強化するイメージがあるためだと考えられます。

人は社会通念による思い込みに影響を受けやすいのです。

 

 【後知恵バイアス】

「やっぱりそうなると思った」という印象は、思い込みによるものである可能性が高いのです。

これを、後知恵バイアスといいます。

 

人は後知恵バイアスにより、答えを知ったあとに、最初から分かっていたと認識する傾向があります。

「やっぱりそうなると思った」という言葉が浮かんだとき、実際にはそれほどわかっていなかったのだと、認識を改める必要があります。

 

【信憑性の罠】

 

人は説明を受ける時に、その根拠らしきものを提示されると、それが根拠になっていなかったとしても信じやすいものです。

たとえば、説明の際に画像やグラフを見せられると、画像やグラフが有用な情報ではなかったとしても、説得力が高いと感じやすいのです。 

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3.体と脳

【表情と脳】

表情が脳に影響することが実験でわかっています。

笑顔を作ると体内でドーパミンが生成されます。

 

恐怖の表情を作ると、視野が広まり眼球の動きが早まり呼吸が早くなります。

嫌悪の表情を作ると、恐怖の表情とは逆に、視野が狭まって呼吸が遅くなります。

 

また、ボトックスという薬品を顔に注入するとしわが無くなるのですが、表情を作りにくくなります。

表情が作りにくくなった人は、感情を表現することだけでなく、対面した相手の感情を読み取りにくくなります。

 

【色や温度と脳】

色や温度なども、脳に影響することがわかっています。

 

温かい飲み物を渡されると、渡してきた相手が温厚な人間であるという印象を持ちやすくなります。

また、ボクシングは統計上赤コーナーの選手が勝ちやすく、柔道は青い道着を着た選手が勝ちやすいのです。

目に入る色によって、集中力に影響があるのだと考えられます。

 

IQテストの表紙の色とテスト結果の相関を検証した実験では、表紙が赤色のテストでは点数が低くなることがわかりました。

 

色や温度だけでなく、香りも脳に作用します。

たとえば、コーヒーのような心地よい香りをかぐと、人助けをしやすくなる傾向があります。

 

【ビタミンと暴力行為】

ビタミン剤を囚人に飲ませ、行動の変化について研究した実験があります。

この実験では、プラシーボ効果を避けるため、栄養素の入っていない錠剤を飲ませるグループを比較対象としました。

 

さらに、錠剤の配付者にも、どれが本物のビタミン剤かわからないようにして、2年間にわたって実験をおこないました。

 

その結果、ビタミン剤を飲み続けた囚人の暴力行為が35%減少したのです。

ビタミンの摂取が、暴力行動を抑制することがわかったのです。

 

身の回りに、普段からイライラしている人はいませんか?

その人は、おそらくビタミンが不足しているのだと考えられます。

その人に怒られたときは、ビタミン剤を顔面に叩きつけることで、問題は解決するはずです。

 

4.幸福感と問題解決

 

人生に感じる幸福感はU字カーブを描きます。

若い頃と、年をとってからが幸福度が高く、その間は低くなりがちなのです。

 

悲しみの感じ方は世代を問わず一定ですが、ストレスは若いころの方が感じやすい傾向があります。

若者のほうがネガティブなものに反応しやすい、ネガティブバイアスがあるのです。

ネガティブバイアスは年齢とともに小さくなります。

 

ただし、損をしたときに感じる負の感情は、歳を取っても変わりません。

一方で、損を回避しようとする傾向は、年を重ねるとともに小さくなります。

そのため、高齢者のほうが詐欺の被害に遭いやすくなるのです。

 

【議論の有効性】

問題解決には議論をした方がよいことが科学的に証明されています。

実験では、当初50%程度であった問題への正答率が、ディベート後に回答させた場合70%まで上昇しました。

 

これは、参加者の中に正解を知っている人がいなくても、同様の結果となりました。

誰も答えがわからない状況であっても、議論することで正解を導き出せる確率が高くなるのです。

 

【保留の有効性】

問題と直面したら、すぐに解決策を探すよりも、一度放置することで、解決策が思いつきやすくなります。

無意識のうちに脳が解決策を検討しているのです。

 

また、睡眠中も脳は活動しています。

レーニング後に数時間程度のブランクがあると、トレーニング直後よりも成績が低下します。

しかし、その後に睡眠を挟むと、トレーニング直後よりも成績は向上することがわかっています。

 

なお、一度にまとめて勉強するよりも、繰り返し勉強した方が記憶の定着率が高いこともわかっています。

学習直後の成績には、どちらもあまり差がないのですが、時間をおいてテストをすると、繰り返し勉強した人の方が正解率が高くなるのです。

 

おわりに

人の選択は、そのほとんどが外からの刺激や身体状況に応じた反応です。

自らの意志で決定したと思えるようなことでも、ほとんどの場合、決定を下した時点の状況に対しての反応なのです。

 

本人が決定したと思うよりも前から、脳は反応しています。

自分で考えて決めるよりも前に、どう行動するかは脳が決定しているのです。

 

人は考えよりも反射によって行動しているため、良い行動を選択するためには、良い経験を積んで良い反射ができるようにすることが重要なのです。

 

脳には妙なクセがある (新潮文庫)

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