もさおのためになる話

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【人に感情はいらないのか?】「行動経済学③」

今回は、「行動経済学」という本について紹介します。3本に分けて掲載している最後の記事です。

 

 

1.選択肢は多いほうが良い?

人の満足度を高めるためには、選択肢は多いほうが良いとは限りません。

スーパーでの実験で、6種類のジャムと24種類のジャムをそれぞれ試食させて販売してみました。

すると、40%の客が6種類のジャムの方を訪れ、60%の客が24種類のジャムの方を訪れました。

 

しかし、そのうち実際にジャムを購入した客は、6種類のジャムの方が30%、24種類のジャムの方は3%だけでした。

 

人は、自分の把握できる範囲での選択を望むのです。

就職活動においても、より多くの企業から選択できる学生の方が、そうではない学生より満足度が低くなりました。

選択肢を必要以上に用意することで、満足度の低下につながるのです。

 

 

2.異時点間の選択

決定をおこなう時点と、損失や利得を得る時点が時間的に離れているような意思決定を「異時点間の選択」といいます。

ほぼすべての経済的選択は、異時点間の選択です。

 

人は、この異時点間の価値を低く見積もりがちです。

利得を今すぐ得られない場合は、その価値を大きく割り引いて考えるのです。

 

30日後にもらえる1万円は、今すぐもらえる1万円より価値がかなり低く感じます。

これを「現在志向バイアス」といいます。

この傾向は、利得や損失が将来の遠い時点になるほど、割引率が小さくなっていきます。

 

今すぐもらえる1万円と明日もらえる1万円には差がありますが、30日後にもらえる1万円と、31日後にもらえる1万円にはあまり差がないのです。

 

 

3.ピーク・エンド効果

内視鏡検査の実験では、検査の不快さは、最も強かった痛みの度合いと、検査の終わり方の2点をもとに評価されることがわかりました。

つまり、「最も強い部分」「最後の部分」が特に印象に残りやすいのです。

これを「ピーク・エンド効果」といいます。

 

この実験では、検査時間の長さは評価に影響しませんでした。

これは、金銭的価値を判断する際にも生じます。

実際に経験したことと、記憶に残ることは異なるのです。

さらに、それを基に下される意思決定にもズレが生じるのです。

 

お笑いでも、笑った回数よりも、笑いの大きさと、オチの決まり方が重要視されます。

小ボケを繰り返すインディアンスは、M1向きではないということです。

 

4.金銭的価値の重視

人は、何かを評価するとき金銭的価値を過剰に重視する傾向があります。

 

50セントのハート型のチョコと、2ドルのゴキブリ型のチョコのどちらか好きな方を選ばせる実験では、ゴキブリ型チョコを選んだ人の方が多くなりました。

しかし、実際に食べた結果、満足度が高かったのはハート型のチョコでした。

 

また、楽な課題を行うとバニラアイスがもらえ、労力を要する課題を行うとピスタチオアイスがもらえる実験では、大半の人が楽な課題を選択しました。

その後、楽な課題を行うと60ポイント、労力を要する課題を行うと100ポイントが与えられ、60ポイントでバニラアイス、100ポイントでピスタチオアイスと交換できるルールに変更しました。

 

すると、大半の人が労力を要する課題を選択し、ピスタチオアイスをもらいました。

人は、100ポイントという値に価値を感じるのです。

なお、バニラアイスとピスタチオアイスのどちらが好きかという質問に、殆どの被験者がバニラアイスと回答しました。

 

5.公共財ゲーム

円滑な経済活動には信頼関係が不可欠です。

取引相手が完全に利己的であると想定すると、取引が成立しなくなってしまうのです。

 

これを検証するのに、公共財ゲームという実験があります。

まず、グループのメンバーに1,000円の初期額を与え、メンバーはそこから公共投資額を決定します。

そして、公共投資額の合計を2倍にして、それをメンバーに均等に分配するというものです。

 

このゲームでは、全員が全額を投資するのが、最も効用が高くなります。

しかし、個人の観点では公共投資を行わない方が合理的な判断となるのです。

自分だけは投資せっず、他のメンバーからの投資を手にするのが最も合理的なのです。

 

実験では、初回は30~40%の公共投資を行いましたが、繰り返しゲームを行うにつれ、投資額は減少していきました。

 

公共財ゲームに、100円支払うことで特定のメンバーに300円失わせるという処罰のルールを導入しました。

その結果、投資額は70%程度となり、繰り返しゲームを行うにつれ、投資額は増加していきました。

 

これは、毎回メンバーを入れ替えて行っても同様の傾向となりました。

非協力的なメンバーには、その後自分とは別のグループになるにも関わらず、処罰が実行されたのです。

また、メンバーとは関係ない第3者が処罰を下せる公共財ゲームにおいても、第3者は自己の利益とは関係なく、非協力的なメンバーに処罰を実行しました。

 

たとえ自分が得をしなくても、処罰を下したいと考える人は多いのです。

 

 

6.信頼ゲーム

信頼と、それに対する報酬について検証した信頼ゲームという実験があります。

 

まず、Aは初期額1,000円から任意の額をBに支払います。

Bは支払われた額の3倍の金額を受け取る事ができます。

そして、Bはそこから任意の金額を、報酬としてAに支払うというものです。

 

実験の結果、Aは初期額の53%程度を支払い、Bは受取額の30~40%を返礼しました。

続いて、これにAがBを処罰できるルールを付け加えました。

Aは支払い時に、Bに対して要求額を提示することができます。

そして、それが満たされない場合はBに処罰を与えるか選択できるというものです。

 

その結果、Aが処罰ありを選択した場合、Bの返礼額が小さくなることがわかりました。

処罰は裏切りを防止しますが、信頼は損なうのです。

 

 

7.経済学を学ぶと利己的になる?

経済学を学ぶと、人は利己的になります。

様々な分野の大学教授へのアンケート結果によると、1年間に全く寄付をしなかった人の割合について、経済学者の9.3%が最高となりました。

他分野では1.1~4.2%でした。

 

また、経済学専攻の学生と、他の分野を専攻する学生を対象に、1回限りの囚人のジレンマ実験を行いました。

すると、裏切りを選択した割合は経済学専攻学生で60.4%、その他専攻の学生は38.8%となりました。

 

なお、その他専攻の学生も、事前に囚人のジレンマについては学んでいます。

つまり、知識がないから裏切りを選ばなかったというわけではありません。

 

 

8.感情と意思決定

意思決定には感情が大きな役割を果たしています。

通常、便益が大きいものはリスクも大きいものです。

 

しかし、人は好意を抱く対象は、便益が大きくリスクは小さいと認識します。

一方、負の感情を抱く対象は便益が小さくリスクが大きいと認識します。

 

また、認知資源が乏しい状況では、感情的に物事を選択しがちです。

認知資源とは、考えるためのエネルギーのような概念です。

 

ある数字を記憶させる実験では、実験の途中でケーキかサラダの好きな方を選択させました。

2桁の数字を記憶した学生はサラダを選択しやすく、7桁の数字を記憶した学生はケーキを選択しやすくなりました。

 

認知資源に余裕があれば健康的なサラダを選ぶのですが、認知資源が乏しいと感情的な選択をしてしまうのです。

 

9.感情と合理性

人は、感情に左右されて、ときに合理的ではない選択をします。

しかし、感情的に行動することが、必ずしも過ちを招くわけではありません。

むしろ感情的に行動することが、より良い結果をもたらす場合があるのです。

 

例えば、「裏切り者に対しては、経済的犠牲を払ったとしても相手を厳しく追求する」ということがあらかじめ分かっていれば、裏切りを事前に抑制することができます。

 

また、人は経験を感情とともに記憶することで、同様の状況で生じる感情をもとに決断を下せるようになるのです。

頭で考えなくとも、咄嗟に行動を選択することができるのです。

 

合理的でないからと言って、感情を排除すべきではありません。

感情があったからこそ、人間はここまで発展できたのです。