もさおのためになる話

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【ためになる解説】「影響力の武器」

今回は、「影響力の武器」という本について解説します。

影響力の武器では、人に影響を与える効果的な手法についてまとめられています。

 

 

 

 

思考に潜む罠

 

動物には、特定の信号刺激に対して自動的に対応行動を取るプログラムが遺伝子に刻まれています。

それは時に、愚かな行動を導いてしまいます。

人にもこのような機能が備わっているのです。

 

例えば、他人にものを頼むとき、たとえ正当な理由でなくても、理由らしきものを添えることで、依頼を聞いてもらえる可能性が高くなることが証明されています。

コピー機の順番を譲ってもらう実験では、「急いでいるので」という理由を添えただけで、承諾率が60%から94%に上がりました。

 

さらに、「コピーをとらなければいけないので」という、明確な理由とは言えない理由を添えても、承諾率が93%に上がりました。

 

また、重いものを持った後に軽いものを持つと、実際よりも、それが軽く感じます。この作用を知覚コントラストといいます。

無意識のうちに、最初に提示されたものを基準にして物事を考えてしまうのです。

 

2人で歩いている女性がいると、男性は無意識に2人の可愛さを比較する習性があります。

テレビでアイドルが並んで映っているとアイドル同士で比較するため、可愛さの基準はかなり厳しくなります。

 

私も、身長の低い人を横に置くことで身長を高く見せられるので、昔から小人を飼っています。

 

人は、一部の情報のみを元に決定を下すことで、脳の処理能力に余裕を持たせているのです。

しかし、この思考の近道が、時に愚かな結果を導いてしまうのです。

 

一方で、このような人間の特性を理解すれば、人に影響を与える武器として用いることができます。

この本では、人に影響を与える武器として、以下の6つのアプローチ方法が紹介されています。

 

1.返報性、2.一貫性、3.社会的証明

4.好意、5.権威、6.希少性

 

それぞれ紹介していきます。

 

第一の武器:「返報性」

返報性のルールとは、何かをしてもらったら、何かお返しをしなくてはならないという意識が生じることを指します。

人は恩を受けた状態であると、その恩に報いる義務感を感じます。

恩を返さなければ恩知らずであると評価されるリスクを抱えてしまうためです。

 

この機能は、好きではない人からの恩に対しても働きます。

たとえ嫌いな人から受けた恩でも、それを返さなくてはと感じるのです。

 

 

返報性のルールを利用して人に依頼をする際は、依頼のお返しに何かを与えるよりも、何かを与えてから依頼した方が効果的です。

 

また、何かを与えずとも、何かを譲歩することでも返報性のルールは機能します。

 

ある要求を断られた際に、一部を譲歩することで、相手に対して「譲歩してくれたのだから受け入れなければならない」という義務感を生じさせることができます。

 

また、譲歩による要求を受け入れた場合は、単純に依頼を聞いた場合より満足度が高まる傾向があります。

ただし、元の要求が現実的でない場合には、譲歩による返報性は生じません。

 

 

 

第二の武器:「一貫性」

人は一貫性を保つために、自分の利益を損なう行動を選択することがあります。

これは、他人から「一貫性のない人間である」と評価されるリスクを避けるためです。

しかし、考える手間を省くために、一貫性に基づき機械的に行動を選択しているという場合もあります。

 

一貫性の原則を利用して、何かしらのコミットメントをさせることで、相手の行動を誘導することができます。

 

コミットメントをさせるために必要な要件は次のとおりです。

 

①行動を含む

②公表される

③努力を要する

④自分の意思で選ぶ

 

この4点について説明します。

 

①行動を含む

コミットメントには、紙に書いたり、声に出すといった行動を伴うことが必要です。

ある振る舞いを続けていると、本心でなかったとしても、その振る舞いに自分の意志が引っ張られていくのです。

 

②公表される

周囲に公表すると、他人から、そういう人間なのだなというイメージを持たれます。

人は、他人から持たれているイメージに、自分を近づけようとする傾向がありるのです。

 

③努力を要する

あえて手間を要することで、自分は努力をしてまでそれを望んだのだと認識するものです。

その努力は、無意味なものである程、効果が高くなります。

ある組織への加入儀礼が、無意味で厳しい内容であるほど、加入者はその組織から離れにくくなります。

そのため、過激な加入儀礼は禁じられても無くなることがないのです。

 

また、ある行為を禁じられると、その行為に対する評価が高くなる傾向があります。

子供に対して、あるおもちゃで遊ぶことを禁じた実験では、その場では言うことを聞いたものの、そのおもちゃで遊びたいという気持ちは高くなりました。

罰則は設けずに口頭でのみ禁じた場合は、このような結果にはなりませんでした。

禁じられた行為は、逆にやりたくなるということが、科学的に証明されているのです。

 

④自分の意思で選ぶ

人は受け身の状態ではコミットメントを引き出せません。

他人から強制された行動は、自分のアイデンティティにはなり得ません。

能動的に主張することで初めて効果が生まれます。

 

 

 

第三之武器:「社会的証明」

人は、他人の判断を基準にして、自分の行動を選択することがあります。

これを社会的証明といいます。

皆がその行為をやっているという情報は、その行為を選択する有力な材料となるのです。

 

また、社会的証明には、皆ができるのであれば自分にもできるという認識を生み出す効果もあります。

今まで誰もできていなかったことを誰かが達成すると、他にも達成者が何人も現れます。

100m走も、以前は10秒の壁は切れないと言われていましたが、一人の選手が9秒台を出した途端、9秒台で走る選手が何人も現れました。

 

一方で、誰もやらないなら自分もやらないというネガティブな結果につながる場合もあります。

さらに、自分で考えることを放棄して、周りの考えに盲従するというリスクもはらんでいます。

 

ある新興宗教において、信者たちが集まって集団自殺をするという事件が起こりました。

集団の中で、影響力のある人物が毒を飲み、周りの人間もどんどん追従していき、ほとんどの信者が毒を飲んで死んでいったのです。

 

信者たちは、周りの人間がやっているから、それが正しい行動であると判断したのです。

 

私も道に迷った時は、とりあえず多くの人が向かっている方向に進んでいくことがあります。

 

その結果、待ち合わせ時間に遅れてしまったのは、果たして私のせいであると言い切れるでしょうか。

 

第四の武器:「好意」

人は、好意を抱く対象には同意したくなります。

好意を抱く理由には「自分に似ている」「自分を褒めてくれる」「同じゴールを目指す仲間である」という3つの要素があります。

社会的証明においても、好意を抱く相手の考えが重要視されます。

このような特性を持った相手に対して、無意識に肯定的な対応を取るのです。

 

また、ある情報が、別の肯定的な情報と同時に入ってきた場合、ハロー効果が生じて、その情報も肯定的に捉えやすくなります。

 

たとえば、美味しいものを食べながら話を聞くと、話を肯定的に捉えやすくなるのです。

一方で、自分にとって悪い情報を伝えてくる相手には、相手がその原因でなかったとしても、その相手に悪い印象を抱きやすくなります。

 

古代ペルシャ皇帝の使いは、戦いの勝利を報告したときは英雄のように扱われましたが、敗北を伝えたときには斬り殺されてしまいました。

 

可愛い女の子が、私と反対の意見を持っていた場合、私は全力で自分の意見をひっくり返します。

可愛い子に勧められた商品は、どんなに怪しくても購入してしまいます。

 

このような人間を、業界ではカモと呼びます。

 

 

第五の武器:「権威」

人は、権威者の指示に盲目的に従う傾向があります。

 

かつて、他人に電気ショックを与える実験が行われました。

研究員の指示に従い、レバーを引くことで、被験者に電流が流れます。

電流はどんどん強まっていき、被験者は実験をやめるよう懇願します。

しかし、研究員は指示を繰り返し、実験は続けられたのです。

 

実は、この電気ショックは偽物で、被験者は電気ショックを与えられたフリをしていました。

研究員の指示により、レバーを引く人が本当の実験対象だったのです。

 

その結果、自分の意思に反してまで、研究員からの指示に従いレバーを引いてしまうことが証明されました。

 

人は、権威の有りそうな人に命じられると、やりたくないことでも、たとえ罰則がなかったとしても、従ってしまうのです。

 

病院における実験でも、権威の力が署名されました。

医師を名乗る人物が、明らかに誤った指示を出しても、看護師はそれに従ってしまいました。

 

権威を示すには、肩書だけでなく、高級な衣服や車、装飾品を身につけることでも効果があります。

 

ちなみに、このブログも20万円の高級スーツを着て執筆しています。

 

 

第六の武器:「希少性」

人は希少性に対して高い価値を感じます。

「何を得られるか」よりも、「何を失うか」を訴えた方が行動に影響を与えやすくなります。

 

なお、それが実際に希少であるかどうかよりも、減っていることを重要視する傾向があります。

また、一度手に入れたものが奪われそうになると、それが以前にはなかったものであっても、人は奪われることに大きく反発します。

 

希少性は、失われるという感覚から生じるのです。

 

この希少性を利用した方法に、オークション制度があります。

商品の金額が上がるにつれ、購入する機会が失われることと、皆が欲しがっているという社会的証明の2つの面で、価格をつり上げる効果が生じます。

 

制限されている事象に対しても、希少性が生じます。

例えば、ある主張が禁じられると、内容に関わらず、その主張が真実であると認識されやすくなります。

 

あるものの数が減っていくということと、その情報が出回っていないものであると説明されると、それを手に入れたいという気持ちが強まります。

 

おわりに

 

以上、1.返報性、2.一貫性、3.社会的証明、4.好意、5.権威、6.希少性という6つの武器について説明しました。

 

この6つの影響力の武器を利用することで、他者へ効果的に働きかけることができます。

 

また、自分にもこのような特性が備わっていることを自覚し、自分を誤った方向に誘導しようとする働きかけに対処していくことも重要なのです。

 

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